飛躍的な進化「超高速・低遅延」の実現
― 定義 ―
次世代のWi-Fi規格「Wi-Fi 7」をご存知でしょうか。
2世代前の規格「Wi-Fi 5」がまだまだ主流のなか、最新規格「Wi-Fi 7」が定まり注目を集めています。1世代前の規格「Wi-Fi 6」では、Wi-Fi機器1台で処理できるデバイスの数・通信の量を上げる狙い(大容量化)で規格されました。対して「Wi-Fi 7」は更なる高速通信を目指した規格です。
― 背景 ―
Wi-Fi 6の目的と課題
前規格「Wi-Fi 6」が目指した"大容量通信"とは
Wi-Fiをはじめとする通信機器の性能は、大きく分けて「①通信スピード(速度)」「②同時に処理できるデバイス数(容量)」に分けられます。
2019年に規格が定まり翌2020年頃から徐々に普及し始めた規格「Wi-Fi 6」。その狙いは、一人あたりが利用する通信デバイスの増加や、今後普及が見込まれるIoTなど、Wi-Fiに接続するデバイス数の増加に対応するために「大容量化」を目指しました。その結果、同時に通信を処理できる数は4台から8台に増加(※1)。商業施設など不特定多数の方が利用する場所でも、安定した通信が実現しました。
※1.Wi-Fiへの同時接続台数ではなく、通信を一度に処理できる台数。実際には処理する対象を高速に切替えることで、8台以上の通信を実現。
前規格「Wi-Fi 6」の課題は"通信スピード向上"
大容量化を果たした「Wi-Fi 6」ですが、通信スピードの向上については飛躍的進化とは言い難い規格となりました。現在も多く使われている前世代規格「Wi-Fi 5」と比べても「Wi-Fi 6は1.4~2.8倍程度の高速化に留まります。
前規格をおさらい
― 意義 ―
Wi-Fi 7が目指す高速通信
「Wi-Fi 7」で実現する"通信スピード向上"
次世代規格「Wi-Fi 7」は通称であり、正式名称は「IEEE 802.11be」と定められました。
前世代規格「Wi-Fi 6」から最も進化した点はその「通信スピード(処理できる通信量)」にあります。
技術的な計算(論理値)では「Wi-Fi 5」の13倍、「Wi-Fi 6」と比べても4.8倍と通信スピードが飛躍的に向上。その最大スピードは46Gbps(1秒あたり46ギガビットの通信)と未体験のスピードと言えます。なお、46Gbpsとは5.75GBのファイルを1秒程で転送できることを意味します。※1Gbps=1秒あたり1ギガビットの転送速度。1ギガビット=0.125ギガバイト。
なお「Wi-Fi 6」では同時に処理できる台数が8台でしたが、「Wi-Fi 7」では倍の16台に拡張されます。
真の価値は"低遅延通信"にあり
高速通信を支える技術として、通信の"低遅延化"も挙げられます。
通信機器間のデータのやりとりは、細かなデータを高速かつ断続的に受渡すことで実現します。そして、普段あまり意識しないこの細かなデータの受渡しでは、多かれ少なかれ遅延が発生します(いわゆるラグ)。イメージとしては、バケツリレーにおいて受渡しの際に、減速したりバケツの中身が溢れ、総じて遅れるのと同様です。
「Wi-Fi 7」ではこの遅延に対して「物理的な工夫」と「論理的な工夫」の双方からアプローチすることで改善が期待されています。その遅延は「Wi-Fi 6」と比べ最大1/100とされています。
"低遅延通信"で改善するシーン
・Webコンテンツの表示スピード向上
・オンライン会議の品質向上(よりスムーズな画面共有や音声)
・インタラクティブなAR/VR体験
高速・低遅延を支える技術「MLO」
通信の高速化・低遅延化を支える技術は様々ですが、「Wi-Fi 7」で誕生した特徴的な仕組の一つが「MLO(Multi Link Operation)」です。従来のWi-Fiでは、通信に利用できる帯域として、2.4Ghz、5Ghzの2種類が用意されており、接続する際にどちらか一方を選択し利用していました。
「Wi-Fi 7」では3つ目の帯域として6Ghzの帯域が加わり、更に3つの帯域を同時に利用できる様になります。3つの帯域を同時に利用することで、物理的にも論理的にも最適な伝送方法をリアルタイムに算出します。
― 課題 ―
Wi-Fi 7が普及するまで
課題①:Wi-Fi 7対応機器の普及
「Wi-Fi 7」を利用するには、Wi-Fi機器が新しい規格に対応している必要があります。
対応した機器の発売は始まったばかりで、家電量販店に並ぶのは早くても2023年後半と予想されます。
課題②:プロバイダーの回線スピードUP
これまでのお話は、あくまでもWi-Fiと利用するデバイス間での通信の改善です。
インターネットを利用するには、インターネットとWi-Fi 機器とを繋ぐプロバイダーを経由します。年々高速化するプロバイダー回線ですが、家庭向けのサービスでは、早くても~20Gbpsと、その通信スピードは「Wi-Fi 7」を下回ります。インターネットを含む全体の通信スピードは、各区間での下限に依存するため「Wi-Fi 7」の実力を存分に発揮するのは難しい状況と言えます。今後は、「Wi-Fi 7」対応機器の普及とあわせ、家庭向けのプロバイダーサービスも更新されることが予想されます。
― 重要性 ―
新しいコミュニケーションの創造
インターネットは情報の引出から「コミュニケーションの場」に
インターネットは永らく「情報を参照する場所」でしたが、近年はビジネス・プライベート問わず「コミュニケーションの場所」になりました。
「Wi-Fi 7」がもたらす高速かつ低遅延の通信は、ビデオ会議やメタバースの新たな可能性を感じさせます。オンラインにおけるよりリアルなコミュニケーションは、単にこれまでのコミュニケーションの延長ではなく、新たな価値の創造につながることが予想されます。
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