リアルタイムなシミュレーションを可能にするデジタルツインの機能やメリットとは?
製造業を中心に注目されつつある「デジタルツイン」をご存じでしょうか。センサーやIoT機器などから様々なデータを取得できるようになった今、取得したデータを活用しシミュレーションを行うデジタルツインの活躍が期待されています。そこで今回は、デジタルツインの「メリット」「担う役割」についてお届けいたします。
デジタルツインとは?
デジタルツインとは、現実世界で取得できるデータをもとに、現実世界を仮想空間上に再現し、シミュレーションや分析した結果を、現実世界にフィードバックするシステムのことです。仮想空間に現実空間の情報を忠実に再現するため、デジタルの双子(ツイン)と表現されています。
例えば、自動車工場をデジタルツインで再現できれば、製造機器や各種センサーからのデータをもとに、仮想空間で製造工程をリアルタイムにモニタリングできるほか、より最適な稼働や故障のリスクをシミュレーションし、すぐに実際の製造工程にフィードバックすることも可能です。
デジタルツイン:3つの機能
①モニタリング
製造機器や各種センサーから取得したデータをもとに、製造工程をリアルタイムに仮想空間に再現し、稼働状況や検知した故障を可視化(モニタリング)します。
②シミュレーション・分析
①モニタリングにて再現した仮想空間上で、想定される条件の変化による影響をシミュレーション・分析します。例えば、生産量を120%上げた場合の「故障リスクの予測」や「不足するリソースの洗い出し」を行えます。
③フィードバック
仮想空間上での①モニタリングや②シミュレーション・分析で得られた分析結果を基に、変更点を実際の製造工程に反映させます。例えば、分析にて故障のリスクを検知した場合、その製造機器や故障の影響を受ける製造機器を自動で停止することができます。
従来のシミュレーションシステムとの違い
諸条件をもとにシミュレーションを行うシステムは従来からあります。従来のシミュレーションシステムとデジタルツインは、シミュレーションを行う点では同じですが「現実空間と連動しているか」という違いがあります。
従来のシミュレーションシステムは、とある状況を人間が手動で切り出し再現したもので、現実空間とは連動していません。一方デジタルツインは、現実空間で生成されたデータをリアルタイムに仮想空間に連動しシミュレーションを行います。
デジタルツインのメリット
デジタルツインの活用メリットについて、引き続き自動車工場を例に説明いたします。
その1.物理的なスペースが不要
デジタルツインは仮想空間上に存在するため、現場の場所や時間帯を問わず、いつでもシミュレーションすることができます。例えば、製造工程の配置変更をシミュレーションしたい場合、デジタルツインなら製造を停止したり、別途物理的なスペースを用意する必要がなく、仮想空間上ですぐにシミュレーションに取り掛かれます。自宅からでもシミュレーションを確認できるため、働き方改革も進みそうです。
その2.時間やコスト削減
仮想空間で製造工程の分析を行い、工程の無駄やムラを見つけ出して改善につなげることができます。また製品の試作品を作る際、従来は有効性が不明瞭な試作品をいくつも作り時間とコストを費やす方法が一般的でしたが、デジタルツインではシミュレーション・分析の結果をもとに試作すべき方向性を導き出すことができます。
その3.リスクの低減
仮想空間で試作から製造まですべての工程をシミュレーションできるため、試作品や製造工程に潜むリスクを事前に把握しやすくなります。例えば、試作品の品質が良くても製造工程に課題があり、試作からやり直すといったこともなくなります。
デジタルツインが担う役割
未来はこれからも進化し続けますが、人類は欲深く人間だけでは実現できないことまで追い求めることでしょう。様々な情報が飛び交う複雑な現代社会は、既に人間の脳でシミュレーションできる限界を超えており、人間の脳を超えた複雑なシミュレーションができるデジタルツインは、AI(人工知能)と併せて普及していくことが予想されます。
そうしたデジタルツインは産業ビジネスでの活用が期待されていますが、身近な場面でも活用されるかもしれません。例えば、各地域のデジタルツインを作れば、街行く人の数をもとに電車の運行を変更したり、外出に適した混雑していない時間帯を予測するなど、私たちの生活の意思決定から行動までをも最適化できるようになります。
また、一部では人間のデジタルツインを作る研究が行われています。骨や内臓といった人間の外身だけでなく、考え方や意識といった人間の中身までもデジタルツイン化します。自分自身のデジタルツインと会話する日が来るかもしれませんね。
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